Nosemantik Max

子供の都合悪いことスルー力は見習いたい (NM)

人文系大学院の話

天漢日乗さんのところより「文科省は粗製濫造博士号という誹りをこれ以上広げるのか 図書館サービスの拡充なくして文系博士号の「増量」は暴挙」
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2007/02/post_a46c.html
全体的にはその主旨に賛同するのだけど,いくつか?の部分が合ったので,なんというか,総論賛成・各論反対みたいな...

> 人文系でこれ以上博士号を増量するのは、無理がある。
そうかな? ま,増量するだけその後のポストが増えればいいんだけどね...将来性は暗いよね.

> 24時間オープンしている図書館で、司書から常に最新の文献についての
> アドバイスが受けられるというシステムのある大学図書館
院生や無給ポスドクの一時退避先として図書館の時間外勤務がいいんじゃないかなとは思ったことがあるけど,院生レベルで司書から最新文献のアドバイスをもらうって点には疑問.院生なら,自身の研究分野の最新動向は知っていて当然では?

> わたしは人文系のいわゆる「課程博」(論文博士は「論博」)で、
> 大学院三年修了で学位を得た。
優秀な方みたいですね.僕は7年かかりました,orz.

> 相互利用で大量の論文を複写していただいたり、
> 現物を利用して論文を書いた。
僕も同じ.

> 国立大学だったので、国立大蔵書に関しては、複写代はかからず、
> かなり恵まれた環境だったと思う。
え? うちは複写代かかりましたけど...

> 相互利用の複写料金についても、わたしが利用したときは国立大学間は無料
え? 思いっきり有料でしたけど...

> 院生使用の文献については、年間一人 25万円が認められていたが、
> それでも足りず、確か指導教官の研究費を回してもらっていたんじゃ
え? 25万も認められるんですか? うちはゼロでしたので,必要な文献はポケットマネーで買っていましたけど...コピー代も払っていたし.

> 3年で論文を書いて学位を得るというのは、
> 学位授与の半年前には論文が完成していないといけないので
> 論文作成に当てられるのは最長で実質2年半
最近は3年で博士取る人多いです.僕も文科系でどうやって3年で取れるのか不思議でもあります.要領良い人が増えたってのもあるし,研究科・研究室でなんとか3年で取らせようという意識があるところもある.

> 博士論文の大学間格差というのは確実に存在する。
同感.

> 人文系で博士号を取っても、決してアカデミックポストへの就職は
> 約束されない状態であり、人文系の大学院の士気は相当落ちている。
就職は約束されないけど,士気は落ちてないのではないかと個人的には思う.COEとかJSPSの補助が多くなるに連れ,海外学会で発表する院生なんかも増えたわけだから.

> 高額の借金(旧育英会からの奨学金)をして博士号を取っても、
> 就ける職業が極めて限定され、場合によってはないので、
> 目端の利く優秀な学生は大学院に進学しない
確かに,進学者は減ったけど,今は奨学金ではなく学振のDC1が昔と比較すると取りやすくなっており,またCOE関連大学だと院生に補助が出るので,僕みたいに奨学金の借金をいっぱい背負うケースは昔よりは減少した?

> 大学教員になったとしても、研究よりは、
> 教育業務に多くの時間を割くことになる。
これは当然のことかと思います.そりゃ,ずっと研究だけできたらいいかもしれないけどさー.

> 優秀な学生に取って、魅力的な職場とはいえないのが現状だ。
これについても,このブログでも書いているけど,嫌な仕事をしていっぱいお金をもらうのではなく,やりたいことや好きなことを仕事にできるという魅力があるんじゃないかな.少なくとも,自身の専門分野では日本中,いや世界中で競争できるわけだし.ゼミや学会で賢い人々と研究について議論するのは,やはり贅沢で魅力的かと思います.

> 有望な若者であれば 自分の能力を正当に認め、
> 能力に見合う賃金を払ってくれる場所に行くだろう。
とはいえ,修士あたりの実力をきちんと評価してやりがいのある職場を見つけるのも,人文系の学生のとっては至難なんですよねえ.そもそも人文系の院生や研究者って一日ずっと文献や資料,史料をめくっているのが一番楽しいわけだし.

> 優秀な人材は、大学院に進まなくても、いろんな職場が用意されている。
これまで,比較的優秀な人材があまり良くない職場へ行くのを見ているので,この辺りはなんともかんとも.ま,なかなか理想的な職場ってありえないですけど.

> 学位に見合う職場がない
う.たしかに.

> 文系博士の質も量も充実したいのであれば 細く、長い経済的支援
> が必要だ。たとえばCOEで毎年一億単位を人文系にそそぐよりは
> 毎年一千万円を十年間支給する方が、文系の大学院教育のレベルは
> かなり上がるだろう。
この辺は同意.できればその1000万はなるべく40歳以下の人々へ.

  • まとめ:

人文系の院は博士を取るのも大変だし,その後の就職も大変だけど,好きなことを研究する面白さは十分ある.
院に入る前に,なるべく奨学金を借りないですむような手段を取る.あと,念のため国語か英語の教職を取っておく(または日本語教育).
個人的には好きではないけど,就職するための戦略を考えておく,例えば公募が多そうなテーマを研究分野に加える,高名な先生とのコネクションを作る等.
就職しても幸せになれるとは限らない,っていうか,幸せになれない.
関東圏か関西圏じゃないと,非常勤講師の口すら難しい.
個人的には大学院は少数精鋭よりも多少能力が劣ろうとも多い方が良いと思う(僕自身精鋭でもないので).当然,修士後・博士後の職があるといいんだけど...研究職以外にも準研究職や研究補助職,まがりなりにも仕事のうちに20%ほど研究に直結する内容の職が用意できるといいのになあ.